虚血性大腸炎とは
虚血性大腸炎は、大腸粘膜への血液供給が不足することにより引き起こされる病態です。
この血流の不足(虚血)が大腸の粘膜に炎症を引き起こし、血便や腹痛といった症状を発生させます。
特に高齢者や便秘がちな人に多く見られ、女性に発病する傾向があります。
虚血性大腸炎は虚血性腸疾患の中でも最も一般的にみられるタイプです。
虚血性大腸炎の重症度
虚血性大腸炎は、損傷の深さによって重症度が異なり、主に以下の三つの型に分類されます。
一過性型
一時的な虚血が生じますが、その後血流が回復するタイプです。
全体の約60%を占めており、炎症が軽度で、粘膜や粘膜下層に限定されるため、腸に適切な休息を与えることで完治が期待できます。
狭窄型
潰瘍が深く筋層にまで及び、腸管の内腔が狭窄することが特徴です。
全体の約30%にみられます。
発症後1~2ヶ月で狭窄が生じることが多く、腸閉塞(腸が詰まった状態)のリスクが高まるため、状況によっては手術が必要になります。
壊死型
大腸の血流が回復せず、細胞が死んでしまう最も重度の腸炎です。
発生率は、全体の約10%と比較的稀ですが、非常に重篤な状態であり、そのままにしていると命に関わる危険性があるため、緊急手術で病変部分を切除する必要があります。
虚血性大腸炎の症状
突然の強い腹痛に続いて下痢が生じ、徐々に血便が見られるといったものが典型的な症状です。
身体の左側(下行結腸、S状結腸の部位)に痛みが生じることが多く、冷や汗や吐き気を伴うこともあります。
虚血性大腸炎の原因は
ストレス?
虚血性大腸炎は大腸の粘膜が適切な血液供給を受けられないことで発生し、糖尿病、高血圧、脂質異常症による動脈硬化、脱水、便秘による腸内圧の上昇などが原因です。ストレスも発症に影響する可能性があります。
虚血性大腸炎の検査
虚血性腸炎の診断には、病状の程度や広がりを評価し、他の腸管疾患との鑑別を行うために様々な検査が必要です。
以下は虚血性腸炎の診断に用いられる主な検査方法です。
血液検査
白血球数やC反応性タンパク質、乳酸値などの測定を通じて炎症の程度や虚血の有無を評価します。
これらの数値が異常に高い場合、虚血性腸炎を含む腸管疾患の可能性があります。
大腸カメラ検査
腸管の内部を直接観察し、炎症の状態や範囲、潰瘍や壊死の有無を確認します。
しかし、虚血性大腸炎が重症で腸管が破れやすい場合には、慎重に行う必要があります。
腹部CTスキャン
腸壁の肥厚や腸管周辺の炎症、壊死部位の確認に有効です。
腹腔鏡検査
腹腔内を直接観察し、腸管の状態を評価します。
場合によっては、壊死した腸管部分を切除することも可能です。
虚血性大腸炎の治療法
虚血性大腸炎は主に保存的治療により改善するため、食事指導を含む腸の安静が重要です。
症状が強い場合は絶飲食とし、入院して水分や栄養の点滴補給を行います。
症状が落ち着いてきたら、お粥から始めて徐々に食事を通常に戻していきます。
虚血性大腸炎は
どれくらいで治る?
虚血性大腸炎の治癒期間は症状の重さによって異なりますが、多くの場合は一過性で、適切な安静とケアにより2~4日で症状が軽快します。
軽症の場合は自宅で消化の良い、刺激の少ない食事を摂りながらの療養が可能です。
重症の場合は入院して絶飲食と点滴による水分・栄養補給が必要になります。
治療は主に症状緩和と自然治癒を待つことが中心です。